トヨタの新型ミニバン 90系(95)ヴォクシーハイブリッドE-Fourの走行性能について良かった所や気になる所について記事にしていきます。比較対象としては違う車種になってしまうステーションワゴンからの乗り換えなので、かなり個人的な感想になってしまいますが、最後までお読みいただければ幸いです。
トヨタの新型ミニバン 90系(95)ヴォクシーハイブリッドE-Fourの走行性能
第5世代に進化したトヨタハイブリッドシステム(THSⅡ)
トヨタの新型ミニバン 90系(95)ヴォクシーハイブリッドに搭載するパワートレーンは、1.8Lアトキンソンサイクルエンジン(2ZR-FXE)と第5世代に進化したリダクション機構付きTHSⅡを組み合わせたハイブリッドシステムです。
90系ノアとヴォクシーのハイブリッド車に搭載するフロントモーターは70kW(95ps)の最高出力と185N・m(18.9kgf・m)の最大トルクを発揮し、ハイブリッド専用の電気式4WDであるE-Four車は30kW(41ps)の最高出力と84kW(8.6kgf・m)の最大トルクを発揮するリアモーターを組み合わせます。
エンジン自体はベースが古いZR系エンジンのハイブリッド車向けに開発された1.8L直列4気筒DOHCエンジンである2ZR-FXEを搭載し、2009年にデビューした3代目プリウスと同型のエンジンに改良を加えて、高効率の排気再循環システムと低フリクション化アイテムの採用により最大熱効率40%を実現し、72kW(98ps)の最高出力と142N・m(14.5kgf・m)の最大トルクを発揮します。
また、エンジンとモーターを組み合わせたシステム最高出力は、103kW(140ps)ほどになっているようです。
加速は鋭く高速の伸びは普通
以前のハイブリッド車は遅いというイメージがあって、マイカーを購入する理由としてはイマイチな印象を受けておりましたが、90系ノアとヴォクシーのハイブリッド車に搭載されたモーターがアシストしている速度領域が、最高で130km/hにまで伸びました。
道路状況や搭載している荷物や搭乗人数にもよりますが、日本国内の制限速度の範囲内であれば、ほぼ全ての道路でモーターを使用したEV走行が可能になったとも言えます。
アクセルを強く踏み込んだ0発進では、モーターが駆動してからすぐにエンジンも始動するので、車体の大きさからは想像できないようなモーター+エンジンの力強いトルク感を感じる加速をしますので、初めてアクセルを踏み込んだ時は意外と力強いと感じるとは思います。
プリウスミサイルと呼ばれて叩かれているのも、多分この加速力なのでしょう。
ただし、停止状態から最大トルクを発揮するモーターは回転数の上昇と共にトルク自体が下がっていくのと、空気抵抗の影響もあるためなのか、徐々に加速力が低下していくような傾向はあります。
高速道路での追い抜き加速や上り勾配は頑張ってエンジンを回しているような音が少々煩わしく感じるかもしれませんが、ECOモードに入れっぱなしにしない限り極端な力不足感はあまり感じません。
正直な所、ZRT272Wアベンシスからヴォクシーハイブリッドの乗り換えでは、街乗りや郊外走行時のパワーに特に不満は無く、高速走行時の燃費とエンジン音を一切気にしなければ定速走行も問題なく出来ておりますので、それだけトヨタのハイブリッドシステムは進化を遂げたのだと感じさせられます。
ちなみにシステム最大出力が103kW(140ps)なのは駆動用バッテリーからモーターに供給する電力も関係しているとは思いますが、停止状態から最大トルクを発生して回転数の上昇に応じて下がっていくモーターの特性と、最大出力を発生する回転数が高いエンジンの特性を合わせると、エンジン+モーターの出力がシステム出力とならないのだそう。
エンジン音が煩わしく感じるぐらい回転数が上がってしまうという点では、ヴォクシーの重量に対して搭載するエンジンが非力すぎたのではないかと思います。
燃費は19km/l以上!長距離では21km/l以上は走る
ハイブリッド車の一番の売りは、エンジンとモーターが生み出す低燃費でしょう。
90系ヴォクシーハイブリッドE-Fourの郊外走行で25km/lぐらい走れる人もいるようですが、まだまだアクセルの踏み加減に慣れていないせいもあるので、19km/lから22km/lぐらいの燃費になる事が多いです。
駆動用バッテリーが3以上残っている時は、ハイブリッドインジケーターのECO以下でEV走行を優先し、ECO以上PWR未満がエンジン走行、PWR以上はエンジン+モーターのアシストが入りやすく力強い加速が得られる範囲です。
EV走行を続けたいのであればハイブリッドインジケーターでECO以下になるようにアクセルの踏み込み量を抑えなければいけないのですが、E-Four車で60km/h~75km/hの定速EV走行が限界で、少しでも登り坂になるとアクセルの踏み込み量が増えてエンジンが始動し、モーターを使用したEV走行がオフになるという事が多いです。
ヴォクシーのハイブリッド車では、EV走行のみでの加速は難しいので、ある程度踏み込んでエンジンメインで加速し、目標の速度に達したらアクセルを緩めてEV走行に切り替える走り方が周りにも迷惑をかけずにそこそこ燃費も維持できます。
E-Four車では発進時や旋回時にリアモーターのアシストが入ってFF車よりも燃費が良くなりそうな感じもしますが、カタログスペック通りにFF車よりも燃費は落ちると考えていても良いのかもしれません。
また、60km/h~70km/hの定速走行でエンジンが始動しないECOギリギリの状態でアクセルの踏み込み量を維持してEV走行状態で走り続けるのはかなり難しいと思いますし、続けられたとしても駆動用バッテリーの残量が減ってエンジンメインの駆動に切り替わりますので、あまり気にしないで走るのが良いと思います。
踏み込んでもなるべくECOとPWRの中間のラインを超えない加速を意識して、目標の速度に達したら一度アクセルを緩めてEV走行に切り替える走り方をするのが、今の所燃費が一番良いとは思いますが、エンジンの回転数を上げすぎない事と駆動用バッテリーが満タンにならない事を意識すれば、エンジンの回転で充電したエネルギーが無駄になる事は無いのではないかと思っております。
アクセルの反応が良いノーマルとパワーモードはエンジンが稼働するECOの範囲を簡単に超えてしまいますので、アクセルを踏み込んだ時のダイレクトな応答は無くなったとしても、EV走行に入りやすくECOの範囲内を維持しやすいドライブモードはECOモードとなるでしょう。
また、荷物を搭載したりエアコンを使用するとECOの範囲内を維持するのがますます難しくなりますが、エコ空調モードがオンになるドライブモードもECOモードになります。
ドライブモードとは別にEVモードのスイッチがありますが、エンジンを主に使用する上り坂や回生ブレーキで充電できる下り坂が続く時の他、高速走行が続く事が想定される前に溜まっている電気を一度使い切って、満充電になりにくい状況を作っておくと無駄を作らなくて済みそうです。
ある程度速度の上限はありますが、EVモードはECOモードよりもEV走行が出来る範囲がECOとPWRの中間あたりまで伸びるので、駆動用バッテリーが満充電になりそうな時は積極的に使っていくのも良いでしょう。
ドライブモードセレクトスイッチの走行モードの違い
燃費の欄でも少し触れましたが、シフトレバー横のドライブモードセレクトスイッチを押すと、ノーマル・パワー・エコの3つの走行モードを選択する事が出来ます。
- ノーマルモード
燃費性能、静粛性、運動性能のバランスがよく、通常の走行に適しています。 - パワーモード
トランスミッションとエンジンの制御により、アクセル操作に対する反応を早め、力強い加速が可能です。
パワーモード表示灯が点灯します。 - エコドライブモード
アクセル操作に対する駆動力を穏やかにすると同時に、エアコン(暖房/冷房)の作動を抑えます。燃費の向上を意識した走行に適しています。
エコドライブモード表示灯が点灯します。
パワーモードにしたからと言って最高出力が上がるというわけではなく、エコモードにしたからと言ってモーターを優先的に使うというわけでもなく、アクセル操作に対する反応の早さを変える、いわゆる純正のスロットルコントローラーみたいなものなのでしょう。
1000kmほど走らせた実際のフィーリングとしてドライブモードの選択による違いをまとめてみました。
- ノーマルモード
アクセル操作に対してダイレクトな反応をするモードで、通常の走行に適しているモードです。 - パワーモード
アクセル操作に対して素早い反応をし、また踏み込んだ時にエンジンが最高出力を発揮できる回転数になりやすいようにトランスミッションを制御して、力強い加速が可能になるモードです。 - エコドライブモード
アクセル操作に対する反応を弱くして、実際のアクセル開度に到達するまでの時間が長めになるように制御し、なるべくエンジンの回転数を低く抑える省燃費走行を意識したモードです。
エコドライブモードは、暖房/冷房の作動や風量を抑制して燃費への影響を最大限に抑えるエコ空調モードが自動的にONになります。
どのモードに入れていてもある程度アクセルを踏み込めばパワーモードと同等の制御に自動的に切り替わっていると思うので、通常はノーマルモードかエコドライブモードのままで充分なのではないかと思います。
燃費は冬に落ちる
トヨタのハイブリッド車は、暖房の仕組みがガソリンエンジンと同じで、エンジンの排熱で温められた冷却水の熱を回収して空気を温めて室内に暖かい空気を吹きださせます。
そのため暖房をオンにすると強制的にアイドリングを始めたり、EV走行をオフにしたりと何かと燃費悪化の原因になってしまいますし、燃費を回収するチャンスであるはずの長い下り勾配で強制的にエンジンを始動させてしまう事もあるので、冬場の走り方は難しい部分があります。
下り勾配が続いて満充電になりそうな時はシフトレバーをBに入れて強制的にエンジンを始動させて水温を温めるのも良いですし、駆動用バッテリーを消費するためのセラミックファンヒーターを搭載してエアコンの暖房を止めてしまうのも燃費の悪化を最小限に止める事ができました。
冬のハイブリッド車は、工夫をしないと燃費があまり良くならないという点で少々扱いが難しいです。
ロールは少し大きめだけど乗り心地は悪くない
比較対象がステーションワゴンがメインで、ミニバンの中で比較するとヴォクシー購入前に時々乗っていたエスティマだけの、あまりアテにならないレビューとなってしまう事をご了承下さい。
今までの自分で選んだ所有車は、四輪独立サスペンションを採用した車種が全てで、たまに運転をするエスティマを除けば、フロントがマクファーソン・ストラット式・リアがトーションビーム式コイルスプリングを採用した車種を選んだのはヴォクシーハイブリッドが初めてです。
リアにストラット式を採用したマークⅡクオリスを除けば、リアにダブルウィッシュボーンかマルチリンクを採用した車種というのが何故かこだわりでしたが、左右をクロスビームで繋ぐ仕組みが安っぽく感じてしまうのと、接地性が低くなってしまうのがあまり好みではありませんでした。
そのため、今回ヴォクシーハイブリッドを選んだのは、足回りの構造を初めて妥協しての初めての車選びとなります。
特に前車アベンシスはイギリスのトヨタで製造している欧州車に近いトヨタ車という事で、アウトバーンでの走行を想定した高速安定性と荒れた峠道でも接地性の高さを感じられる足回りが売りだったと思いますが、オーバースピード気味で段差のあるカーブに突っ込んでも曲がってくれる走行性能が素晴らしかったので、車検がすんなり通れば手放したくなかった車種でもあります。
エンジンは非力だけど足回りがしっかりしていて運転していて楽しい車が欧州生まれのアベンシスだったとは思います。
もちろんエスティマを時々運転していたので、なんとなくトーションビーム式の乗り心地は理解していたつもりですが、後ろから前に伝わってくる突き上げというかふわっとする感じが少し気持ち悪かったけど、乗っているうちの慣れなのでしょうね。
ミニバンでもいいかなっって気持ちにさせてくれた車ではありましたが、その後にアベンシスを運転するとやっぱり足回りのしっかりとした安心感は伝わってきます。
90系ヴォクシーハイブリッドE-Fourは、エスティマと基本的な構造は同じ、フロントがマクファーソン・ストラット式・リアがトーションビーム式コイルスプリングとなります。
乗り心地は意外とミニバンっぽさが少なく、小さな段差は少し硬めに反応して大きな段差で効率よくショックを吸収して、跳ねている感じやふわふわ感が少ないしっかりとした足回りであると感じますし、高速走行時の不安定感も感じない良い乗り心地だと思います。
しかし、1.7tの車重の影響かE-Fourの腰高感が影響しているのか、それとも足回りの構造のせいなのかは分かりませんが、きつめのカーブを曲がる時のロールはエスティマ以上に出ているかなという印象は受けますので、セダンやステーションワゴンからの乗り換えであれば少々不安に感じる人もいるかもしれません。
ブレーキの効きが甘いと言われるけど特性が分かったような気がする
ハイブリッド車を購入したのは今回が初めてとなりますが、ブレーキをかける時のコツを覚えるまでは、ガソリン車とはブレーキのかかり具合に違いがある事に違和感を感じると思います。
トヨタのハイブリッド車は油圧・回生協調式ブレーキを採用しており、弱い踏力であれば駆動用モーターを発電に使ってバッテリーに電力を蓄えますが、回生ブレーキだけでは足りない部分を油圧式ディスクブレーキで補います。
もちろん減速時に油圧式ディスクブレーキを強く作動させてしまうようなブレーキのかけ方をすると、その分のエネルギーが無駄になってしまうわけですが、回生ブレーキと油圧式ブレーキの力の配分はどうやらコンピューター制御で行っているらしいのです。
走行後はだいたいブレーキが冷えているので、ハイブリッドインジケーターでCHGの範囲を振り切った時か速度が5km/h以下にならない限りは油圧ディスクブレーキをほとんど使わずに減速しているのではないかと思われますが、ブレーキの配分がコンピューター制御なので実際には効いていてもダイレクト感を感じないからなのではないかと思われます。
速度が速い段階からの減速ではそこそこブレーキが効いている感じがしますが、踏み始めの速度によってはブレーキの効きが甘く感じる気もするので、速度に対するブレーキの強さの制御がうまく出来ていないのかもしれませんね。
5km/hぐらいで発生するカックンという衝撃も回生ブレーキメインから油圧ディスクブレーキに切り替わった時のショックなので、早めにブレーキをかけて徐々に踏力を減少させて、前との車間に合わせて調整しながら10km/h以下で一旦踏力を抜く方がカックンという衝撃も減らせているような気がします。
踏み込めばブレーキはしっかり効いておりますので、ガソリン車からハイブリッド車に乗り換える時は、フィーリングの違いについて慣れが必要かもしれません。
雪道に備えてE-Fourを選択したけど、冬本番はこれから
雪景色や冬花火を見に行くのが好きなので、今回は初めて4WDを選択いたしました。
何も無ければFFでも良かったのですが、白川郷帰りの岐阜と長野の県境で起きた立ち往生の渋滞にハマってしまい、そこから一度身動きが取れなくなってしまった経験が、今回のヴォクシーハイブリッドE-Fourを選んだ理由の一つでもあります。
その時は結局、岐阜に一度戻って中央道を使って帰りました。
ノアとヴォクシーに搭載する4WDはハイブリッド車専用のE-Fourですので、FFをベースにリアモーターを制御する電気式4WDとなっていますので、エンジンとリアデフを繋ぐプロペラシャフトはありません。
ドライ路面でも発進加速時やカーブを曲がる時にリアモーターを使用した4WDになるように制御されているのですが、正直な所FFと比較して乗ってみないと違いはほとんど分からないでしょうし、何となくカーブへの入りよりも少しアクセルを踏んだ出口の方が素直に曲がっているかもしれないという感覚です。
実際にはアベンシスの方が最小回転半径が少し小さいけど、ヴォクシーの方が小回りが利いている感じがするのは、もしかしたらリアモーターの制御が働いて運転しやすくなっているのかな?
少々道が悪い場所でアクセルを踏み込むとリアタイヤも路面を蹴っている音はしていたので、最高出力30kW(41ps)で最大トルクが84kW(8.6kgf・m)だとしても、ヴォクシーの重くて大きな車体を押す力はあるようです。
マルチインフォメーションディスプレイに左右で独立したトルク配分が表示されないというコメントも見かけましたが、ガソリン車のダイナミックトルクコントロール4WDとハイブリッド車のE-Fourで左右のトルク配分を制御する機能は実装されておらず、今の所はダイナミックトルクベクタリングAWDを搭載した車種で左右が独立した制御を行えている状況との事です。
E-Fourの走行性能を本格的に感じられるのは冬を迎えるこれからだと思いますので、何かを感じる事が出来たなら改めて追記していきたいと思います。
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