今までハイブリッド車に乗った事も無い私が購入した90系ヴォクシーハイブリッドが納車されるまでの繋ぎで借りたトヨタ ヤリス・ハイブリッドを街中と郊外でひととおり走らせてみたので、驚異の省燃費性能以外にも意外と走りも良かったのでその印象をレポートしてみたいと思います。
驚異の低燃費と加速力が魅力なトヨタ ヤリスハイブリッドに試乗してみた!
トヨタ車を代表するコンパクトカーの後継車種であるヤリスとは?
同じ車種でも日本仕様と欧州仕様は名前が違う事もあるトヨタ車では、今も販売していたら名前を変えていたであろうコロナの欧州版アベンシス、日本でも販売されていたオーリスがありますが、ヤリスは元々ヴィッツの欧州仕様として販売していた車種です。
軽自動車では小さいけど、普通車では少々大きすぎると感じる方や、可愛らしいデザインから若い女性に好まれる車種だった印象は受けますが、欧州ではヴィッツの発音があまり良い意味で捉えられない事もあって欧州仕様のヤリスという名称になったらしい。
ヴィッツは1999年のデビュー以来20年にわたって販売が行われていましたが、3代目のヴィッツ誕生20周年記念モデルを最後に2020年3月に販売を終了、テコ入れの意味合いも兼ねて欧州仕様であったヤリスがヴィッツの後継車種となりました。
日本仕様は5ナンバーサイズに収められたコンパクトボディ
欧州仕様がアベンシスの実質的後継車種となったカローラと同様に、ヤリスは欧州仕様よりもホイールベースが10mm短く全幅が30cm狭い5ナンバーサイズが日本仕様となります。
TNGA戦略におけるGA-Bプラットフォームの採用車第1号で、3ナンバーになるギリギリの幅でありながら、丸みを帯びたフロントオーバーハングに対してリアオーバーハングはかなり短く収められているようにも思えます。
エンジンやハイブリッドシステムを搭載する都合もあるのかもしれませんが、WRC参戦車両という事もあってフロント周りは空力性能を意識したかのようなデザインになっているのではないかと思います。
それに対してリア周りはかなりコンパクトに収められてはいるが、EP71のリアアンダーウィングを意識したような形状のテールランプが特徴的です。
ヴィッツは若い女性がメインターゲットだったんだろうけど、昭和後期から平成初期に走りにも振ったトヨタ・スターレットや日産・パルサーのようなスポーツコンパクトを意識しているのではないかと思います。
しかし、全モデルで鉄チンとホイールキャップが標準装備になっていてアルミホイールがオプション設定と言うのも珍しいのではないかと思う。
広いとは言い切れないけど狭さを感じさせない室内
丸みを帯びたデザインやドア内張の厚みもあって広いとは言い切れないフロントシート周りですが、身長175cmの大人が乗っても窮屈さは感じられないぐらいのスペースは確保されています。
助手席と運転席に2人乗車すると多少は近く感じてしまう部分はありますが、そこに目を向けなければ正直な所コンパクトカーに乗っているという感じはしませんでした。
その一方で、ある程度身長の高い人が前席に座ると、リアシートはかなり窮屈になる印象は受けましたので、3人から5人が乗るとなると、こじんまりと座らなければいけないのかもしれません。
リアオーバーハングの短さからは想像できなかったラゲッジスペース
リアオーバーハングの短さからラゲッジスペースもかなり狭いのだろうと思ってリアハッチを開いてみたら、意外と広いのが驚きです。
そのままリアシートを後ろに下げればリアシートも広くなるのだろうと思ったけど、やはりベビーカーを載せられるぐらいの広さは確保されているので、特定のユーザーに的を絞ったというわけでは無さそうです。
また、トヨタのハイブリッド車では標準装備またはオプションとなっているリアの100Vコンセントは、ヤリスではハイブリッド車に限りメーカーオプションとして設定されています。
1500Wまでの電化製品まで使用出来る他、災害時に電気が使用出来なくなった場合に車が発電機代わりになる非常時給電システムも使用出来るようになるので、これから起こるかもしれない災害に備えるのであれば付けておいて損は無い装備となるでしょう。
非常時給電システムの操作方法
ブレーキを踏まずにPOWERスイッチ(プッシュスタートスイッチ)を2回押す
スイッチを押す間隔が1秒以上にならないように、AC100V給電スイッチを3回連続で押す
メーターパネルのディスプレイ表示が、非常時給電モードになればリアのAC100Vコンセントを災害時に電力を必要とする住宅向けに使用出来るようになります。
非常時給電システム起動時は、AC100Vコンセントが使えるだけではなく、ディスプレイオーディオやエアコンも使用出来るようになるので、車中泊や子供の習い事の送迎待ちなどでも活用できるのではないかと思います。
バッテリー残容量が少なくなってきた際は、通常のスタンバイと同様にエンジンが始動するシステムになっていますので、使用する場所の条例や換気状態に気を付けて使用してください。
ディスプレイオーディオは標準装備
ディスプレイオーディオはグレードによって8インチか7インチが標準装備となりますが、TVやCD・DVD再生機能、ETCは販売店装着オプションとなります。
ただし、音楽を聞く分にはApple CarPlayやAndroid Autoに対応しているので、スマートフォンを持っていれば特に困る事は無いと思います。
基本的にスマートフォン向けの音楽配信サービスは圧縮ファイルであるAACで配信している場合が多いのですが、Apple MusicやAmazon Music Unlimitedでは、規格上CDで収録が出来なかった48Khz24bit以上のハイレゾ音源やDolby Atmosなどの空間オーディオが選択できるようになるので、DVDが必要じゃなければCD・DVDオプションを付ける必要も無いと思います。
ハイブリッドのG以上でデジタルメーター、ステアリングスイッチは全車標準装備
ハイブリッド車のZとGでメーターパネルがデジタル表示となり、左にシフトポジションやパワーインジケーターを表示、右に水温計や燃料残容量を表示します。
センターには燃費などの様々な情報を表示する4.2インチのカラーTFT液晶のマルチインフォメーションディスプレイが全車に標準装備となっています。
ステアリングにはディスプレイオーディオやレーダークルーズコントロールを操作するスイッチが備えられており、免許取りたての人でも比較的手に届きやすかったヴィッツからは想像できないほどの充実した装備になっております。
収納スペースは少なめ
ダッシュボードやセンターコンソール付近の収納スペースは充分と言えるほどの容量を確保していないので、同サイズの車種の中では荷物を積み込む事に過剰な期待をしない方が良いのかもしれません。
グローブボックスの中に車検証などの書類を入れて、スマホなどの小物は助手席オープントレイを使用するぐらいになるのではないかと思います。
笑えるほどに燃費が良いのに踏むと速いハイブリッドシステム
ヤリスハイブリッドに搭載されるM15A-FXEは、可変バルブタイミング機構を備えたハイブリッド専用直列3気筒DOHC12バルブミラーサイクルエンジンとなっており、コンパクトサイズの車両では標準的な最高出力は91PS(67kW)、最大トルクは12.2kg・m(120N-m)のパワーを発揮します。
エンジンだけを見ると正直な所非力であるように感じますが、これに59kw(80PS)の最高出力と141N・m(14.4kgf・m)の最大トルクを発揮するモーターと、第4世代に進化したTHSⅡを搭載しているのがヤリスハイブリッドの恐ろしい所で、踏まなければ燃費30km/l前後の省燃費性に優れたエコカーになり、踏み込めばハイパワー車のような強烈な加速を生み出します。
ハイブリッド車などの環境性能が優れているエコカーは遅いというイメージがありましたが、モーターで進み始めて一定の速度でエンジンが回り始めると、シートに押し付けられるような力強い加速感が得られるのには正直驚きました。
モーターの力では足りない領域をエンジンがアシストしたり、エンジンの最大トルクをモーターの最大トルクでアシストするような協調制御を行っているのだと思いますが、車両重量1.1t未満の軽量ボディにターボを載せたかのような速度域と回転域は存在しているような感じです。
踏み込んだ時のエンジン音は軽自動車のエンジン音を少し太くしたかのような音がして少々煩く感じる時もありますが、モーターのアシストが弱くなってくるような高速域に到達すると加速力が伸び悩む印象は受けます。
ドライブモードはECOモード、ノーマルモード、パワーモードの3つから選択できますが、ガソリン車のシフトチェンジのタイミングを変えるような機能ではなく、モーターとエンジンの制御自体が違う感覚があるので、常にエコモードを使用するよりも状況に応じて切り替えをした方が燃費が良い場合もあります。
エコモードは走行用バッテリーの残容量3番目と4番目を行ったり来たりするけど、パワーモードで踏み込む回数が増えると燃費を犠牲にする代わりに満充電の下か2番目ぐらいまでは貯めやすくなります。
2週間運転したヤリスハイブリッドの感想
2週間ほど運転させていただきましたが、踏まなければ省燃費性に優れたエコカーになり、踏めば強烈な加速感を生み出すハイパワー車のようなフィーリングを楽しめる車だと感じました。
やはり、第4世代に進化したTHSⅡの協調制御がバランスよく機能しているからなのだと思いますが、運転していて楽しい車ではないでしょうか。
欧州生まれのアベンシスを手放してから借りていた車ではありましたが、柔らかすぎてふわふわした印象ではなく、硬すぎて跳ねるような乗り心地でもない、日本の道路事情に合った乗り心地だと思います。
少々レーダークルーズコントロールの反応が少し遅く冷や冷やする場面もあったり、レーントレーシングアシストが少し中央線寄りになってしまう印象は受けましたが、運転支援機構はまだまだこれからの進化待ちといった感じなのでしょう。
個人的な印象ではヴィッツの後継車種というよりも「韋駄天」や「かっ跳び」の異名が付けられた昭和の名車であるスターレットがエコカーとして蘇ったかのような楽しい車ではありますが、車両形式もヤリスのご先祖様であるパブリカ/ヨタハチ/スターレットの「P」が継承されていますので、P系譜の良い所を寄せ集めて時代に合わせたのが現行のヤリスなのではないかと思います。
この記事へのコメントはありません。